ウネウネスリーツーワン 全てフィクションです。
相互リンクを、募集してみたり....
nixi(ニクシィ)やってます。リンクからどぞ。
「ねぇ、知ってる?」
「ん?何を?」
「最近、ネットで話題になってるんだけどさぁ、
異世界に行く方法があるんだって」
「何それ。ユミ、
あんたそれあんまり真剣に話さない方がいいよ」
「えーなんでよー」
「頭が沸いてるように見えるから」
「ひどっ。まぁちょっと聞いてよ。まずはね、
『果てにいく道』って漫画を探すの」
「どこにあるの?っていうか作者誰?」
「知らないよ、そんなこと。黙って聞いてて。
で、その漫画を持って一人になるの。
そしたら、表紙に手をあてて、この本はこんな物語で
自分が主人公だって強く念じながら本を開く。 そうすると、本当にその通りの世界に行けるんだって」
「……聞いて損した」
「またまたぁ。これが結構大規模な噂になってるの。
実際にその本の写真が掲示板に貼られたりしててね」
「そんなの作り物でしょ。そもそも、
知らない人が普通に読んじゃったらどうなるのよ」
「前の持ち主の話が載ってるらしいよ。
一回読んじゃうとその人への効果はないんだって。
で、いつのまにか手元から消えて……」 まるで、大勢の前で演説をしているかのように大声で話す
“ユミ”の言葉を掻き消すかのように、
車内アナウンスが響いた。 電車が停車駅に到着した事を告げるその声に反応して、
少女達はドタバタと駆け下りていく。 車内に残る数名の乗客は、
騒音の原因達を不快感露わに視線で見送る。
飯倉 武もまた同様に少女達の姿を目で追ってはいたが、 心此処に在らずといった様子で、
扉が閉まると同時に勢い良く手元にある
漫画本に視線を移した。 「果てにいく道、作画 井上 健二」 確かにそう書かれている表紙上では、冴えない男が、
体に美しい女性を絡ませこちらを見返している。 武は破りかけていたビニールの包装から
手を離し鞄に仕舞いこんだ。
そうして大事そうに鞄を抱えると、 誰かに見られてやしないかと仕切りにあたりを見回した。
途中、この落ち着きのない男は、
隣に座る若い女に何度も睨み付けられたが、 そんなものに気づいていないかのようにソワソワと振る舞い、
下車してからもその様子は変わることはなかった。 飯塚 武は、元来平凡で大人しい性格であった。
だからどうという事もなく、今までの人生は、
少ないながらも善き友人に恵まれ、 女性関係も縁がないというわけでもなく、
それなりに幸福なものだった。しかし、
彼はいつも円の端にいた。クラスでの立ち位置は愚か、
仲の良い友人グループといる時も、
彼女と二人きりでいる時でさえ、
武が中心の円が出来上がることはなかった。 そんな武にとって、
別の世界に主人公となっていくことができるということは、
何にも代え難い魅力を放っていた。 例えそれが、ただの噂話に過ぎなくとも
試してみる価値は充分すぎるほどであった。 駅をでると、武は鞄を握りしめ走りだした。
体は驚く程軽く、疾走する自分は豪風を巻き起こし、
満開の桜はその風によって、
丸裸になっていくのではないかと思えた。
また、そんな自分を想像して武はひどく高揚した。 家に着くと素早く自室に閉じこもり気分を落ち着ける。
鞄から件の漫画本を取り出すと、表紙に手を触れた。
「何を本気にしているんだか……」
一度はそう自嘲気味に嘆き手を離したものの、すぐに置きなす。 そうして思い浮かべる。
小学生の頃からずっと考えていた物語を。
自分が世界の中心の夢と希望が溢れる冒険の旅に出発するために。 本が立ち並ぶ、
町の小さな古本屋で学ランに身を包んだ男子二人が騒いでいた。 「……おい。これ見ろよ。果てにいく道って、アレだろ」
一人の少年が一冊の漫画本を棚から抜き取った。
「うわー。本当にあったのかよ。俺買ってみようかな」
「……やめとけよ」
もう一人にの少年はパラパラとめくっていた本を
戻しながら制止した。
「なんで。夢の世界にいけるんだろ。いいじゃん」
「ちげーよ。それ、ただ夢の世界にいけるだけじゃないんだ。
漫画が自分の気に入ったラストを探してるんだよ」
「は?意味わかんねーし」
「俺もよく知らねーけど、
最近自称霊能者がネットで騒いでるんだよ。
呪われた漫画で気に入らない世界だと
メチャメチャにされちまうから手だすなって」
「霊能者ねー」
少年は、馬鹿にした様子でニヤリと笑う。
「でもこれ表紙は絵は普通じゃね?
なんつーか、まんま冒険物って感じだし」
「表紙に騙されんなってことだろ。中見てみろよ」
「……グロッ。いきなりモンスターにリンチされてるし。
リンチってか拷問だな。って、
相手変わるだけでずっと続いてるだけかよ」
おぞましい絵が続く本の中では、
仕切りに主人公の男が後悔の言葉と、
助けを求めるセリフが書き綴られていた。
「な?」
「いや、前の持ち主が究極のマゾとか」
「んなことあるか。最も、中身見た俺達には、
もう何にも起こらねーよ」
いまだ好奇心に囚われている少年を
もう一人が無理やり店の外へと連れ出していく。 少年と入れ替わりにやってきた一人の老人は、
一冊の本を手にしてレジへと向かった。 老人は、家路の途中にある満開の桜に
ささやかな嫉妬心を起こした。
生をうけてからの年数は、それほど違わないにも関わらず、 威風堂々と咲き誇る桜と消え行く存在の自分を比べる事は、
何にも増して耐え難い事だった。 家に着くと息子の嫁が玄関で老人を出迎えた。
「お義父さん、お帰りなさい。
何か買ってらしたんですか?」
「あぁ、ちょっと本をね」
軽く返事をして部屋に引っ込もうとする老人だが
女はかまわず話続ける。
「なんて本をお買いになったんですか?お義父さんが買う本、
面白いの多いから気になっちゃって」
老人は一瞬、狼狽した様子を示したが、
照れくさそうに笑いながら袋から本を半分だけだして見せた。 「漫画本だよ。急に読みたくなってしまってね」
「あらあら。まだまだお若いんですね」
女はケラケラ笑いながら、
ご飯が出来たらお呼びしますといい老人を見送った。 老人は部屋に入る直前に極小さな声で
「若くなりにいくのさ」
と囁いた。 女は何を言われたのかわからず聞き返そうてしたが、
すでに扉は閉められた後だったので、
義父との会話などあの程度で上等だろうと思い直し、
居間の方に歩みを進めた。 居間では、つけっぱなしのテレビが、
数ヶ月前に行方不明になった井上という青年が
体中を噛みちぎられた変死体で発見され、 歯形から女性が犯人である可能性が高いと
伝えたところだった。 了
ブログランクーモーラ
http://moora.mobi/index.php?act=in&s=7a601e89ac86f44e5392
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Re:無題
訪問ありがとうございます。
ドSMなオハナシでつか。そうでつか。
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