ウネウネスリーツーワン 全てフィクションです。
相互リンクを、募集してみたり....
nixi(ニクシィ)やってます。リンクからどぞ。
綾子は、気づいていた。
その視線に。
数日前から執拗に向けられる視線。
磨かれたエレベーターの扉、棚に並べてある調味料、ふと横を見たときに目に入る窓ガラス。
覗く瞳は、ただ綾子を見つめ続ける。
感情のないうつろな視線。
停車したバイクのサイドミラー、銀色のスプーン、電気のおちた携帯電話の画面。
視線を交えることは出来ない。視線の元にあるあるモノを見ることは出来ない。
その視線は、ほんの一瞬の間だけ綾子を捉える。
綾子は、小さく溜息をついた。
「気にしてもしょうがない」
小さく声に出すと幾分か気が楽になる。
幼い初恋の時、好いた少年が、いつも一瞬だけ目が合うと、気恥ずかしげにそらす彼が、私のことをいつも見ているのだと感じていた。
それはただの思いこみで、自分が彼を見つめていただけだと、懐かしい夕焼けの校舎裏で気づかされるまで私は、彼の視線を感じ続けていたのだ。
今度の視線も結局の所、私の気のせいなのかもしれない。
本当に視線が存在しても、私が見ようとするから、ソレも私を見ようとするのかもしれない。・・・・・・あの時の彼のように。
綾子は、鏡に向かって大げさに満面の笑みを浮かべる。今日は、思いっきりお洒落をして、街に出よう。ほしかった服を買って、話題のイタリアンを食べよう。
きっと良い気分転換になるだろう。
街を歩く綾子。
街角のウィンドウに目をやる。
お気に入りの服に身を包んだ自分が写る。やっぱり、今日はこの服で正解だった。颯爽と歩く自分に満足げな表情を浮かべ、視線を前に戻す。
後ろで小さく女の叫び声がした。後ろを振り返ろうかと一瞬迷ったが、やめることにした。大方、道路のくぼみにつまずきでもしたのだろう。なにより、今日は人に構ってなどいられない。自分のために過ごす一日なのだ。
綾子は、点滅しはじめた信号に気づき、足早に去っていった。
「ちょっとどうしたの、いおり?虫でもいた?」
綾子の後ろを歩いていた女が声をかけると、いおりと呼ばれた少女は、息を詰まらせるように話し始める。
「いまさ・・・・・・前を歩いてた人いたじゃない。」
「うん。それがどうしたの?」
「ウィンドウに写ってたよね?」
「さぁ?見てないけど・・・・・ここ歩いてたなら写るんじゃない?どうしたのよ。ズボンのチャックでも空いてた?」
「ん・・・・・・なんかさ・・・ウィンドウに写った姿がさ、一瞬遅れたみたいに動いた気がして・・・・・・」
話を聞いた女が軽快に笑う。
「そんなことあるわけないじゃない。怪談には時期ずれすぎでしょ。」
曖昧な笑顔を見せるいおりの手をもどかしそうに引く。
「あ、あのコートかわいい!あの店いこ!!」
いおりは、行くからひっぱらないでと、声を上げながらチラリとバックの金具を見た。
一瞬だけ、視線を感じたような気がして・・・・・・
覗き見る影 終
ブログランクーモーラ
http://moora.mobi/index.php?act=in&s=7a601e89ac86f44e5392
その視線に。
数日前から執拗に向けられる視線。
磨かれたエレベーターの扉、棚に並べてある調味料、ふと横を見たときに目に入る窓ガラス。
覗く瞳は、ただ綾子を見つめ続ける。
感情のないうつろな視線。
停車したバイクのサイドミラー、銀色のスプーン、電気のおちた携帯電話の画面。
視線を交えることは出来ない。視線の元にあるあるモノを見ることは出来ない。
その視線は、ほんの一瞬の間だけ綾子を捉える。
綾子は、小さく溜息をついた。
「気にしてもしょうがない」
小さく声に出すと幾分か気が楽になる。
幼い初恋の時、好いた少年が、いつも一瞬だけ目が合うと、気恥ずかしげにそらす彼が、私のことをいつも見ているのだと感じていた。
それはただの思いこみで、自分が彼を見つめていただけだと、懐かしい夕焼けの校舎裏で気づかされるまで私は、彼の視線を感じ続けていたのだ。
今度の視線も結局の所、私の気のせいなのかもしれない。
本当に視線が存在しても、私が見ようとするから、ソレも私を見ようとするのかもしれない。・・・・・・あの時の彼のように。
綾子は、鏡に向かって大げさに満面の笑みを浮かべる。今日は、思いっきりお洒落をして、街に出よう。ほしかった服を買って、話題のイタリアンを食べよう。
きっと良い気分転換になるだろう。
街を歩く綾子。
街角のウィンドウに目をやる。
お気に入りの服に身を包んだ自分が写る。やっぱり、今日はこの服で正解だった。颯爽と歩く自分に満足げな表情を浮かべ、視線を前に戻す。
後ろで小さく女の叫び声がした。後ろを振り返ろうかと一瞬迷ったが、やめることにした。大方、道路のくぼみにつまずきでもしたのだろう。なにより、今日は人に構ってなどいられない。自分のために過ごす一日なのだ。
綾子は、点滅しはじめた信号に気づき、足早に去っていった。
「ちょっとどうしたの、いおり?虫でもいた?」
綾子の後ろを歩いていた女が声をかけると、いおりと呼ばれた少女は、息を詰まらせるように話し始める。
「いまさ・・・・・・前を歩いてた人いたじゃない。」
「うん。それがどうしたの?」
「ウィンドウに写ってたよね?」
「さぁ?見てないけど・・・・・ここ歩いてたなら写るんじゃない?どうしたのよ。ズボンのチャックでも空いてた?」
「ん・・・・・・なんかさ・・・ウィンドウに写った姿がさ、一瞬遅れたみたいに動いた気がして・・・・・・」
話を聞いた女が軽快に笑う。
「そんなことあるわけないじゃない。怪談には時期ずれすぎでしょ。」
曖昧な笑顔を見せるいおりの手をもどかしそうに引く。
「あ、あのコートかわいい!あの店いこ!!」
いおりは、行くからひっぱらないでと、声を上げながらチラリとバックの金具を見た。
一瞬だけ、視線を感じたような気がして・・・・・・
覗き見る影 終
ブログランクーモーラ
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