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ウネウネスリーツーワン 全てフィクションです。 相互リンクを、募集してみたり.... nixi(ニクシィ)やってます。リンクからどぞ。
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 綾子は、気づいていた。
その視線に。
数日前から執拗に向けられる視線。

磨かれたエレベーターの扉、棚に並べてある調味料、ふと横を見たときに目に入る窓ガラス。

覗く瞳は、ただ綾子を見つめ続ける。
感情のないうつろな視線。

停車したバイクのサイドミラー、銀色のスプーン、電気のおちた携帯電話の画面。

視線を交えることは出来ない。視線の元にあるあるモノを見ることは出来ない。
その視線は、ほんの一瞬の間だけ綾子を捉える。

綾子は、小さく溜息をついた。

「気にしてもしょうがない」

小さく声に出すと幾分か気が楽になる。
幼い初恋の時、好いた少年が、いつも一瞬だけ目が合うと、気恥ずかしげにそらす彼が、私のことをいつも見ているのだと感じていた。
それはただの思いこみで、自分が彼を見つめていただけだと、懐かしい夕焼けの校舎裏で気づかされるまで私は、彼の視線を感じ続けていたのだ。

今度の視線も結局の所、私の気のせいなのかもしれない。
本当に視線が存在しても、私が見ようとするから、ソレも私を見ようとするのかもしれない。・・・・・・あの時の彼のように。

綾子は、鏡に向かって大げさに満面の笑みを浮かべる。今日は、思いっきりお洒落をして、街に出よう。ほしかった服を買って、話題のイタリアンを食べよう。
きっと良い気分転換になるだろう。

街を歩く綾子。

街角のウィンドウに目をやる。
お気に入りの服に身を包んだ自分が写る。やっぱり、今日はこの服で正解だった。颯爽と歩く自分に満足げな表情を浮かべ、視線を前に戻す。

後ろで小さく女の叫び声がした。後ろを振り返ろうかと一瞬迷ったが、やめることにした。大方、道路のくぼみにつまずきでもしたのだろう。なにより、今日は人に構ってなどいられない。自分のために過ごす一日なのだ。

綾子は、点滅しはじめた信号に気づき、足早に去っていった。

「ちょっとどうしたの、いおり?虫でもいた?」

綾子の後ろを歩いていた女が声をかけると、いおりと呼ばれた少女は、息を詰まらせるように話し始める。

「いまさ・・・・・・前を歩いてた人いたじゃない。」

「うん。それがどうしたの?」

「ウィンドウに写ってたよね?」

「さぁ?見てないけど・・・・・ここ歩いてたなら写るんじゃない?どうしたのよ。ズボンのチャックでも空いてた?」

「ん・・・・・・なんかさ・・・ウィンドウに写った姿がさ、一瞬遅れたみたいに動いた気がして・・・・・・」

話を聞いた女が軽快に笑う。

「そんなことあるわけないじゃない。怪談には時期ずれすぎでしょ。」

曖昧な笑顔を見せるいおりの手をもどかしそうに引く。

「あ、あのコートかわいい!あの店いこ!!」

いおりは、行くからひっぱらないでと、声を上げながらチラリとバックの金具を見た。
一瞬だけ、視線を感じたような気がして・・・・・・

覗き見る影 終



ブログランクーモーラ

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小説というか、なんというか・・・

-----

管理人 > take さんが入室しました。

take > ばんは~。
 
take >誰もいない?

take >誰か入ってきてよ~
 
管理人 >じゃむ さんが入室しました。

take >おちよっかな・・・

take > おっ^^ 

じゃむ  >こんばんは。
 
take >どもーノシ
 
じゃむ >はじめまして。
 
take >よろしくー。何歳なん??
 
じゃむ >えーっと、 18歳かな?takeさんは?

take >なぜ疑問系??w俺は、21だよ 

じゃむ >心は永遠だからw歳近いねー。

take >ホントは、3、40代だなw 

じゃむ >(’A’)

take >^^

take >どこに住んでるん??
 
じゃむ >どこだと思う?

take >なんだそれw標準語使用??

じゃむ >うん。そだよー。

take >じゃあ、横浜だしょ

take >だ→で

じゃむ >はずれ~。
 
じゃむ >w
 
take >東京!!
 
じゃむ >ブブー。
 
take >大阪??
 
じゃむ >標準語圏じゃないじゃんw
 
take > いやー人口多いところあげれば当たるかと

take >^^

take >で、どこなん??

じゃむ  >知りたい?
 
take >焦らすねーw
 
じゃむ >どSですからw
 
じゃむ >*^^*
 
take >教えてください!!女王様><

じゃむ >ヨシヨシ教えて進ぜよう。 

take >^^

じゃむ >あ 

take >?

じゃむ >の

じゃむ >世
 
じゃむ >です。

take >えーっと。電波さん??^^;

じゃむ >ちがうよー。

take >いやいや。本当はどこなん??

じゃむ >ま、信じてくれなくてもいいけどねー。
 
じゃむ >チャットやるのに住んでる場所なんて関係ないしw
 
take >そりゃそうだけど・・・女性はミステリアスですなw
 
じゃむ >^^
 
take >じゃさ、じゃむは、なんで死んだの??
 
じゃむ >それは、
 
じゃむ >すごく難しい問題。

take >そう??

じゃむ >takeが、なんで生きてるのって聞かれたらなんて答える?

take >んーむずいな。なんとなく??

take >^^;

じゃむ >同じ質問なんだよ。あたしにとっては。
 
take >そんなもんか??まぁいいや

じゃむ >^^
 
take >んじゃあ、死因は??あ、俺は、母親の股間から生産されましたが

じゃむ >www

じゃむ >死因は、ずばり空襲です。 爆死です。

take >3,40代ですらないなwおばあちゃんやんw

じゃむ >女性に向かっておばあちゃんとは(プンプン

take >苦しかった?

じゃむ >ん~よく覚えてないんだよね。

take >すっげぇ衝撃的な出来事なのにw

じゃむ >生まれてきたときの苦痛をあなたは、覚えているのか。

take >どうした急にw

じゃむ >同じくらい衝撃的じゃない?
 
じゃむ >w
 
take >なるほどー
 
take >じゃさ、普段って何してるの?昼間とか
 
じゃむ >質問多いなー。
 
take > 滅多にない機会だしw

take >^^

じゃむ  >^^
  
じゃむ >昼間はねー、日の出が近づくと、自分が消えるみたいな感覚。
  
take >寝てるみたいな??

じゃむ >んーちょっと違うかなぁ。

じゃむ >もっと深いかんじ。

take >?

じゃむ >生きてる人の感覚でいうと、

じゃむ >睡眠薬のんで寝る?強制力が強い。
 
じゃむ >感覚的には、毎朝死んで、また日の入りに生まれ変わる感じ。

take >生まれ変わるねぇ。恐怖はあるの??毎朝死ぬ事に。

じゃむ >ある意味。

じゃむ >夜寝るときさ、明日、自分は目覚めるのかって考えたことない?
 
take >あるあるw

じゃむ >そういう自分の意識が消えるかもしれないって事へ恐怖は

じゃむ >なきにしもあらず
 
take >w
 
じゃむ >でも、消えたくないっていう執着心はない、かな。
 
take >難しい・・・orz
 
じゃむ >死ぬのは、怖いけど、命に執着はないってかんじかな?
 
take >中学生ファンタジックみたいだなw

じゃむ >w次の夜、目覚めたときの幸福感はすごい。

take >んー

じゃむ >生まれる事って、それ自体が幸福なんだと思う。

じゃむ  >昨日、見たはずのモノも、
  
じゃむ >生きているときに知っていただろう事も、全て新鮮に感じられる。
  
take >ほー

じゃむ >どんな出来事もまぶしくて、素敵。それが味わえなくなるのは嫌。

じゃむ >だから、朝が嫌いになる。

take >なんていうかさ、

じゃむ >?

take >ある意味、いきてるよね。

じゃむ >ある意味?

take >充実した日々、存在したいという欲求
 
take >それがない俺に比べたら、生きてると思う
 
take >俺は、そっちの世界に憧れる。生きてる実感って魅力的だよ、やっぱり
 
じゃむ >takeは、生きてる実感ないの?
 
take >変わらない毎日って単調だよ。上京してきて目新しいと思ったことも、もう見慣れた

じゃむ >んー

take >単調な毎日が嫌で上京したはずなのに、おかしいよなー

take >このまま生き続けることがつらい 

take >でも、死ぬのは怖いし、死にたくない、みたいな

じゃむ >んーそれは、少し違う。

じゃむ >毎日、新しく感じるのは、確かに、素晴らしいこと。 すごく好き。

じゃむ >でもね、それは、停滞し続けるって事なの。

じゃむ >さっきさ、私は、18歳っていったじゃん。

take >うん。

じゃむ >本当にそのとおりなの。もし、生きてたらしわくちゃのおばあちゃんになってて

じゃむ >漠然としてるけど、
 
take >うん 

じゃむ >きっと、もっと大人になってたと思う。

take >若いのは、心が自由ってことでいいんじゃない??

じゃむ >18歳の私は、こうなりたいって思う気持ちを持ってた。

じゃむ >でも、今の私は、昨日を糧にすることができないから

じゃむ >どんなにがんばっても、どうしよもない。

take >・・・

じゃむ >何も望みなんかしなくなる

じゃむ >ただ、周りの動きにみとれるてただようだけ。

じゃむ >これが、本当に生きている事だと思うのは、

じゃむ >たぶん、間違ってる。

take >なんか、皮肉だね

take >ありあまる時間があるのに、なにも出来ない

じゃむ >うん。って、まじめに語りすぎたw

take >w

じゃむ >さぁ、なんか明るい話題を。

take >なんで、パソコンできるん??

じゃむ >それかいw

take >出会ったときから疑問に思っていましたw

じゃむ >・・・本当に、今、あなたは、チャットを通じて私と話してると思う?

take >は^^;??

じゃむ >今、あなたがみている画面は、現実?

じゃむ >私ね、今あなたにすごく近いところにいる

take >・・・

じゃむ >今、一緒の部屋にいる 

じゃむ >あなたの指が、私の言葉もタイピングしてる

じゃむ >証拠ある。パソコンみてよ。ネットになんかつながってないでしょ?

take >・・・ 

take >残念wネットにつながってますw

じゃむ >w 

じゃむ >ゾクっとした?

take >ちょいねw

じゃむ >あれじゃん?霊ってプラズマ的ななんかでできるんでしょwだから、出来るんじゃんw

take >あいまいだなー

じゃむ >私が生きてる時にはそんなこと学べなかったのよ

take >今でも学べないけどね。死んでからどうやってネットやるのかって^^

じゃむ >w

take >さて、夜も遅いし、寝るかなー

じゃむ >そだね。単調な毎日を生きるためにがんばりたまえ^^ 

take >おう。おやすみ。またはなせたらいいな^^

じゃむ >機会があったら^^じゃねー 

管理人 > take さんが退室しました。

-----
次の朝、目覚めると、なんとなくこの単調な毎日が、ほんの少しだけれど彩りを取り戻したような感覚に陥った。

ジリジリとうるさく鳴り響く目覚ましの音でさえ、体の感覚を確かめるために必要な物であると思える。俺は、忙しくネクタイをしめながら、ひらきっぱなしだったチャットのページをリロードした。

「じゃむ >どんなに充実した時間が待っていたとしても、
 じゃむ >あの時、肉体を持って生きることが出来る選択肢があったとしたら、
 じゃむ >私は、それを選んだと思う。
 じゃむ >今でも、
 じゃむ >死んだ今でも、生きたいと思ってしまう。
 じゃむ >望んでも、叶えられない世界のなかで、
 じゃむ >この望みだけは捨てることが出来ない。」

昨晩の流れに続き、そう書かれ後、回線が切断されたという情報が示されていた。
俺が落ちたあとも、他の参加者はいなかったらしい。
「あの電波具合だもんな」と、切断を示す記述の時間が夜明け間近であることを眺めながら俺は薄く笑った。

「手がこんでるな」

そう口にしながら、パソコンの電源を落とした。

さぁ、昨日を糧にした一日が始まる。
おはよう、色あせた日常。

今日も俺は、生きていく。

C H A T -了
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 あなたは、初めて恋をしたときの事を、覚えいるだろうか。

俺はと言えば、初恋なんて記憶の隅に追いやられた物にすぎなかった。
しかし、十年ぶりに偶然にも再会した、小学生時代の友人により、あの頃の記憶が鮮やかに思い出された。

 俺の初恋は、小二の夏祭りで突然訪れた。
日焼けした肌にショートカットのすらりとした、同じ歳の少女だ。

あの日、俺は悪友達と共に夏祭りの舞台である神社の裏を、引き金を引くと輪ゴムが飛ぶ仕掛けの、針金でできた拳銃をにぎり走り回っていた。

 物陰に身を隠しながら、敵を討つ。
合い言葉は「弾丸より速く!!」。あの時、流行っていた、ヒーローの決め台詞。

 自分と、ブラウン管の中のヒーローを重ね合わせ調子よく連射する俺の輪ゴムは、悪友の横を通り過ぎ、見知らぬ少女の頭に当たった。

驚き顔で振り向く少女の顔は、何故か、祭り御輿よりも輝いて見えた。

しかしそれも一瞬、彼女に向けて拳銃を構えたままの俺の様子を見ると、怒り顔で詰め寄ってきた彼女を相手に、「おとこおんな!!」などと、お決まりの言葉で口げんかに応戦していた幼い自分がひどく懐かしい。

二人の喧嘩がどうやって収束したのかはもう、記憶の彼方だがその後、彼女も俺達の仲間になった。

俺の小二の夏は、彼女無しには語れないほど一緒に遊びつくした。

悪友にも、彼女にも隠し通したが、初めて人を好きになるという気持ちを知った。

 夏休みを残り一週間程残したある日、彼女は、普段は隣県に住んでいて、夏休みの間だけ祖父母の家にいることを俺たちに明かした。

 あの頃、宇宙より遠く感じていた隣県。そんな遠くに行ってしまうのかと、涙が出そうになった。

彼女と会ったのは、それから2日後の秘密基地での作戦会議が最後だ。また、来年の夏休みに会おうと、俺と彼女は泣いて誓った。

その約束が守られることはなかった。

 しかし、昨日の出来事で色あせた記憶は、突然現実的な鮮やかさをもった思い出へと一変した。悪友の一人が彼女と大学で再会していたのだ。「お前のことも覚えてたぞ」という、言葉とともに彼女の連絡先を教えられた。

 俺は、部屋で一人になると携帯をいぢり簡単なメールを作成した。
なんともいえない気恥ずかしさに、一瞬戸惑いがあったものの、覚悟を決めて送信ボタンを押した。

「弾丸より速く。この想い届け」

自然に口からこぼれたあの時の合い言葉に思わず苦笑いを漏らした。
このメールをみた彼女は、またあの時のように輝く表情をしてくれるのだろうか。

弾丸より速く!!-了

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「ねぇ、知ってる?」
「ん?何を?」



「最近、ネットで話題になってるんだけどさぁ、
異世界に行く方法があるんだって」
「何それ。ユミ、
あんたそれあんまり真剣に話さない方がいいよ」
「えーなんでよー」
「頭が沸いてるように見えるから」
「ひどっ。まぁちょっと聞いてよ。まずはね、
『果てにいく道』って漫画を探すの」

「どこにあるの?っていうか作者誰?」
「知らないよ、そんなこと。黙って聞いてて。
で、その漫画を持って一人になるの。
そしたら、表紙に手をあてて、この本はこんな物語で
自分が主人公だって強く念じながら本を開く。 そうすると、本当にその通りの世界に行けるんだって」
「……聞いて損した」
「またまたぁ。これが結構大規模な噂になってるの。
実際にその本の写真が掲示板に貼られたりしててね」
「そんなの作り物でしょ。そもそも、
知らない人が普通に読んじゃったらどうなるのよ」
「前の持ち主の話が載ってるらしいよ。
一回読んじゃうとその人への効果はないんだって。
で、いつのまにか手元から消えて……」  まるで、大勢の前で演説をしているかのように大声で話す
“ユミ”の言葉を掻き消すかのように、
車内アナウンスが響いた。 電車が停車駅に到着した事を告げるその声に反応して、
少女達はドタバタと駆け下りていく。 車内に残る数名の乗客は、
騒音の原因達を不快感露わに視線で見送る。
飯倉 武もまた同様に少女達の姿を目で追ってはいたが、 心此処に在らずといった様子で、
扉が閉まると同時に勢い良く手元にある
漫画本に視線を移した。 「果てにいく道、作画 井上 健二」 確かにそう書かれている表紙上では、冴えない男が、
体に美しい女性を絡ませこちらを見返している。 武は破りかけていたビニールの包装から
手を離し鞄に仕舞いこんだ。
そうして大事そうに鞄を抱えると、 誰かに見られてやしないかと仕切りにあたりを見回した。
途中、この落ち着きのない男は、
隣に座る若い女に何度も睨み付けられたが、 そんなものに気づいていないかのようにソワソワと振る舞い、
下車してからもその様子は変わることはなかった。  飯塚 武は、元来平凡で大人しい性格であった。
だからどうという事もなく、今までの人生は、
少ないながらも善き友人に恵まれ、 女性関係も縁がないというわけでもなく、
それなりに幸福なものだった。しかし、
彼はいつも円の端にいた。クラスでの立ち位置は愚か、
仲の良い友人グループといる時も、
彼女と二人きりでいる時でさえ、
武が中心の円が出来上がることはなかった。  そんな武にとって、
別の世界に主人公となっていくことができるということは、
何にも代え難い魅力を放っていた。 例えそれが、ただの噂話に過ぎなくとも
試してみる価値は充分すぎるほどであった。  駅をでると、武は鞄を握りしめ走りだした。
体は驚く程軽く、疾走する自分は豪風を巻き起こし、
満開の桜はその風によって、
丸裸になっていくのではないかと思えた。
また、そんな自分を想像して武はひどく高揚した。  家に着くと素早く自室に閉じこもり気分を落ち着ける。
鞄から件の漫画本を取り出すと、表紙に手を触れた。
「何を本気にしているんだか……」
一度はそう自嘲気味に嘆き手を離したものの、すぐに置きなす。  そうして思い浮かべる。
小学生の頃からずっと考えていた物語を。
自分が世界の中心の夢と希望が溢れる冒険の旅に出発するために。  本が立ち並ぶ、
町の小さな古本屋で学ランに身を包んだ男子二人が騒いでいた。 「……おい。これ見ろよ。果てにいく道って、アレだろ」
一人の少年が一冊の漫画本を棚から抜き取った。
「うわー。本当にあったのかよ。俺買ってみようかな」
「……やめとけよ」
もう一人にの少年はパラパラとめくっていた本を
戻しながら制止した。
「なんで。夢の世界にいけるんだろ。いいじゃん」
「ちげーよ。それ、ただ夢の世界にいけるだけじゃないんだ。
漫画が自分の気に入ったラストを探してるんだよ」
「は?意味わかんねーし」
「俺もよく知らねーけど、
最近自称霊能者がネットで騒いでるんだよ。
呪われた漫画で気に入らない世界だと
メチャメチャにされちまうから手だすなって」
「霊能者ねー」
少年は、馬鹿にした様子でニヤリと笑う。
「でもこれ表紙は絵は普通じゃね?
なんつーか、まんま冒険物って感じだし」
「表紙に騙されんなってことだろ。中見てみろよ」
「……グロッ。いきなりモンスターにリンチされてるし。

リンチってか拷問だな。って、
相手変わるだけでずっと続いてるだけかよ」
おぞましい絵が続く本の中では、
仕切りに主人公の男が後悔の言葉と、
助けを求めるセリフが書き綴られていた。
「な?」
「いや、前の持ち主が究極のマゾとか」
 



「んなことあるか。最も、中身見た俺達には、
もう何にも起こらねーよ」
いまだ好奇心に囚われている少年を
もう一人が無理やり店の外へと連れ出していく。  少年と入れ替わりにやってきた一人の老人は、
一冊の本を手にしてレジへと向かった。  老人は、家路の途中にある満開の桜に
ささやかな嫉妬心を起こした。
生をうけてからの年数は、それほど違わないにも関わらず、 威風堂々と咲き誇る桜と消え行く存在の自分を比べる事は、
何にも増して耐え難い事だった。  家に着くと息子の嫁が玄関で老人を出迎えた。
「お義父さん、お帰りなさい。
何か買ってらしたんですか?」
「あぁ、ちょっと本をね」
軽く返事をして部屋に引っ込もうとする老人だが
女はかまわず話続ける。
「なんて本をお買いになったんですか?お義父さんが買う本、
面白いの多いから気になっちゃって」
老人は一瞬、狼狽した様子を示したが、
照れくさそうに笑いながら袋から本を半分だけだして見せた。 「漫画本だよ。急に読みたくなってしまってね」
「あらあら。まだまだお若いんですね」
 女はケラケラ笑いながら、
ご飯が出来たらお呼びしますといい老人を見送った。 老人は部屋に入る直前に極小さな声で
「若くなりにいくのさ」




と囁いた。 女は何を言われたのかわからず聞き返そうてしたが、
すでに扉は閉められた後だったので、
義父との会話などあの程度で上等だろうと思い直し、
居間の方に歩みを進めた。  居間では、つけっぱなしのテレビが、
数ヶ月前に行方不明になった井上という青年が
体中を噛みちぎられた変死体で発見され、 歯形から女性が犯人である可能性が高いと
伝えたところだった。 了
  
 ブログランクーモーラ



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長いです。
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 私は逃げている。


あの女達から。

私が弄んだ女達。

……
いや、弄んだことなどない。

ただ一人を愛することが出来なかっただけだ。

皆が私を必要としていた。

だから私も、皆の私になっただけだ。

「もう、逃がさないわよ」

今まで聞いたことのない程に低く、怒りにみちた声がすぐ近くで響いた。

裕也は、声を上げそうになるのを必死に抑え怯えたように息を潜める。

「早く! 早く出てきなさいよ! 卑怯者!!

女は裕也の居場所には気づいていないようだった。彼女は、裕也が愛した三人のうちの一人である。
まっすぐに伸びた艶やかな黒髪をもった美しい女だ。

ただ、同時に激しい気性を持ち合わせていた。

いつだったか、裕也がうっかり彼女のマグカップを割ってしまった事がある。
友達からの誕生日プレゼントだったのにと大声で泣きわめく彼女に
せめてもの償いをと、新しいマグカップを差し出したところ、
そのマグカップでしたたかに頭を殴られた事があった。
幸か不幸かマグカップは無事だったものの、裕也はあまりの衝撃に気を失った。

目覚めた時には、女はいつもの女に戻り、泣きながら謝っていた。

「ごめんなさい。私、いつもこんなだから、私の周りから皆いなくなっちゃうの……
裕也さんにまでいなくなったら、私……

そう言いながら裕也の頭に冷えたタオルをのせる。

ごめんなさい、ごめんなさいと謝りながら、私から離れないでと懇願した。
こうした事が何度かあったが、事の後には決まって泣きながら謝り、
甲斐甲斐しく裕也の手当てをする女。

次第に裕也の中に彼女の弱さを受け入れることは
自分だけなのではないかと言う気持ちが芽生えた。
その時から裕也は彼女を愛するようになった。
 

 

「ちょっとあんた! こっちみたの?」

 

さっきとは別の女の声が響く。 次第に大きくなってくる女の足音に、
裕也は隠れ続けるのを諦め走り出した。

「あっ!! 待ちなさい!!」

女の叫び声が耳に残った。

彼女は裕也のアルバイト先でパートタイマーとして働いていた。
親子ほど歳が離れている裕也に何かと世話をやき、家を訪れては料理をしたり、
掃除をしたり、だらしなく広げられたままの汚れ物をみて裕也に軽く小言を言った。

 

そんな彼女に裕也は別段好意を抱いたわけではなく、
母親の様な人だなと漠然とした感想を持った。

 

ある日、彼女がバイト先の店長に激しく怒られているのをみた。
彼女は仕事が出来る方ではなかったので別段珍しい事でもなかったが……

 

その日の夜、裕也の家を訪ね彼女は、いつも以上に世話をやいた。

 

裕也はその時気付いた。

 

彼女は、母の様な人なのではなく、母の様な人物を演じることによって、
だらしない裕也の世話をやくことによって必死に自尊心を保っていたのだと。

 

裕也の中でこの弱い女性を守ってやろうという気持ちが生まれた。

彼女がそれで救われるなら、だらしない男を演じ続けようと思った。


裕也は、走り続ける。

 

二人の女がキーキーと叫び声を上げながら追いかけてくる。

 

息がつまり始め、心臓もバクバクと早鐘を打つ。

 

もう走るのを止めようかとも思うが、数十分前に起こった修羅場を思い出す。

 

ファミリーレストランの一角で、
一人の女は狂ったように泣き叫びながら
手当たり次第に裕也に物を投げつけた。



一人の女はコップを叩きわり
鋭いかけらの一つを拾い上げ自分の手首に押し当てながら、
裕也がこんな事をしたのは私の責任だと喚いた。

 

裕也は、騒ぎを聞きつけ彼女たちをなだめようとする
店員達のパニックを利用しようやく逃げ出したものの、
それに対し女はさらに怒り狂った。

 

裕也は、自分で捲いた種だとはいえ、この状況に恐怖していた。

 

 はぁはぁと息をきらしながら後ろを見ると、女達の姿は見えない。

 

「所詮は、男と女だもんな」

 

裕也は息を整えながら壁にもたれた。ふと、気づく。

 

二人の感情的な女に気を取られていたせいか、
あのファミレスの騒ぎの時、もう一人の女はどうしていたのか思い出せないのだ。

 

「もう逃げられないわよ、裕也君」

 

もたれた壁のすぐ横にあった扉が開いた。

 

「うわぁ!」

 

裕也はすぐ近くのドアを凝視しながら叫び声をあげた。

 

「ちょ・・・ちょっと!! 静かにしてよ! 

あの人達近くにいるから気付かれちゃうでしょ! 早くこっち!

捕まったら何されるかわかんないじゃない」

 

裕也はポカンと口をあける。

 

「あんたが、あたしの店の方に逃げてきてくれて良かったよ。早くはいって」

 

女は笑みを浮かべながら手招きをする。

 

「お前は、怒ってないのか?」

 

おそるおそる尋ねる裕也に女はケラケラ笑いながら答えた。

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